コーナー9「ひらく、ひろがる、多様性。」

コーナー9「ひらく、ひろがる、多様性。」コーナー全景 コーナー9「ひらく、ひろがる、多様性。」掲示 コーナー9「ひらく、ひろがる、多様性。」本棚

障がいや国籍、ジェンダーなど、私たちにはさまざまな違いがあり、人それぞれに異なる考えを持って生きています。
しかし、私たちはともに暮らす仲間でもあります。自分とは違う立場の人や、異なる考えを持つ人の声に耳を傾けてみませんか?多様性を知ることで、きっとあなたの視野が広がるはずです。

今回のコーナーでは、多様性をテーマにした本を集め、特集しました。
多様性を認め合う社会は、誰にとっても生きやすい社会だと思います。誰もが尊重され、ありのままでいられる社会を目指すヒントが見つかることを願っています。

障がいとともに。

読み物

『弱い力でも使いやすい頼もしい文具たち』 波子

筋力が低下していく病気のため、車椅子での生活を送る著者は、これまで何気なく使えていたものが、使いにくく不便だと感じることが何度もありました。しかし、そのような「はじめて感じる不便さ」を「新しい視点を手に入れた」と捉えた著者は、世の中には意外と使いやすくて便利な道具があることに気づきます。ちょっとした「使いにくさ」を解決する、50種類の「頼もしい文具」を紹介するこの本は、きっとあなたの不便にも役立つ一冊です。

車椅子と義足
LLブック

『わたしのかぞく なにが起こるかな? LLブック制作グループ

1960年代にスウェーデンで発祥した「やさしく読みやすい」という意味を持つ「LLブック」は、知的障がいや発達障がいなど、読書に困難を伴う場合がある人にも理解できるよう、わかりやすい言葉で書かれた本です。障がい者の「知る権利」をサポートするだけでなく、彼ら、彼女らに本を読む楽しみが届くことを願って作られています。
この本は、どこにでもいそうで、ちょっと面白い家族の日常で起こった出来事を、写真だけでユーモアたっぷりに表現した作品です。“誰でも”楽しめる本なので、是非手に取ってみてください。

うさこちゃんとたれみみくん
絵本

『うさこちゃんとたれみみくん』 ディック・ブルーナ

うさこちゃんのクラスに、片方の耳がたれている転校生の男の子・だーんがやって来ました。クラスのみんなは「たれみみくん」とよびはじめますが、うさこちゃんはあだ名でよばれるのが、いやじゃないかと気になります。いっしょうけんめい考えたうさこちゃんは、ある行動に出ます。
うさこちゃんの優しさと勇気がまぶしく、相手を思いやること、そして多様性について気づかされる絵本です。車いすに乗った女の子・ろってちゃんが主人公の絵本『ろってちゃん』もあわせてオススメ。

読み物

『異彩を、放て。「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える 松田 文登・松田 崇弥

知的障がいのある作家の作品をプロダクト化して対価を還元しつつ、自社も利益を上げる、「ヘラルボニー」という名前の会社があります。
「ヘラルボニー」の創業経営者である双子の兄弟、松田文登さん・崇弥さんの4歳上の兄・翔太さんは、重度の知的障がいを伴う自閉症。このユニークな社名は、翔太さんが繰り返し書いていた文字列が由来となっています。「できないこと」をできるようにするのではなく、彼らに独自の価値を見出し、それをビジネスにする。一人一人の違いを「異彩」として尊重し合える世界を目指す2人の熱い言葉に耳を傾けてみませんか?

壁(バリア)をこえて。

エッセイ

『見えないボクと盲導犬アンジーの目もあてられない日々』 栗山 龍太/原作 栗山ファミリー/文 エイイチ/企画構成・イラスト

全盲の教師でありシンガーソングライターの著者と、相棒の盲導犬「アンジー」の日常を綴ったエッセイ。つるつるのタッチパネルで回転寿司を注文することの難しさや、盲導犬の入店拒否にまつわる問題、紙幣の種類をどうやって判別しているのか等、「目の見えない人」の困り事や日常生活が、著者ならではのユーモラスなエピソードを交えて描かれています。

読み物

『手話の学校と難聴のディレクター ETV特集「静かで、にぎやかな世界」制作日誌 長嶋 愛

「日本手話」で学ぶ、日本でただ一校のろう学校「明晴学園」を1年間取材したドキュメンタリー番組「静かで、にぎやかな世界」。
この作品は、国内外で高い評価を受け、多くの賞を受賞しました。この番組を担当したディレクターは、音声を文字にする通訳と共に働く難聴者。当時、「私は社会のお荷物?」という葛藤を抱えて仕事を続けていました。そんな彼女の目に飛び込んできたのは、声は聞こえないけれど、生き生きとした手話が飛び交う「にぎやかな世界」。静かで豊かな手話の世界を一緒に覗いてみませんか?

小説

『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 丸山 正樹

聞こえない両親の元に生まれた、聞こえる子を「コーダ(Children of Deaf Adults)」といいます。
「コーダ」で警察職員だった荒井は、ある出来事をきっかけに退職し、家族も失います。再就職のため、唯一持っている技能を生かして「手話通訳士」となった荒井は、あるろう者の法廷手話通訳を引き受けます。過去と現在、ふたつの殺人事件がリンクするミステリとして楽しめますが、作中に登場する「ろう文化」についても、是非ご注目ください。

絵本

『みえるとかみえないとか』 ヨシタケ シンスケ/さく 伊藤 亜紗/そうだん

宇宙飛行士の「ぼく」が、後ろにも目がある宇宙人の住む星にやって来たところからはじまる、「見える人」と「見えない人」の世界の感じ方の違いを描く絵本。見えないからできないことや、見えないからこそできること、そして誰でも少なからず違いがあることを、わかりやすく伝えてくれる内容となっています。
「障がい」についてだけでなく、みんなが感じている「当たり前」を見直すきっかけとなる作品。「ちがうこと」と、それを「認め合うこと」について考えてみませんか?

LGBTQ+を読む。

エッセイ

『結婚の奴』 能町 みね子

「男性から女性への性転換者」である著者は、仕事や生活を立て直すために、まず誰かと同居するべきなんじゃないだろうか?……と考え始めます。恋愛や交際に不向きであることを自覚する著者は、お互い恋愛対象にならない人と形だけの結婚を決断。
恋愛でも友情でもない、ゲイ男性との「結婚生活」が築かれるまでの日々が描かれるエッセイ。

読み物

『LGBTと家族のコトバ』 LGBTER

LGBT当事者とその家族のインタビュー集。登場するのは、“男女の夫婦と血のつながった子ども”という、ひとつの家族像に当てはめることのできない多様な家族です。
男性から女性になった夫と、今も昔も変わらずそばにいる妻。性自認は男性だが、夫であるパートナーと2人の子どもを育てる母。性同一性障害を乗り越えて自分らしく生きる弟を微笑ましく思う一方、いなくなった妹を懐かしく思う兄。「他の誰でもない、私を生きる」という、力強いメッセージが詰まった一冊です。

『ふたりママの家で』表紙
絵本

『ふたりママの家で』 パトリシア・ポラッコ

主人公は、遠い国から養子に迎えられた女の子「わたし」。同じく養子として迎えられた弟・ウィル、妹・ミリーの3人のきょうだいが、“ふたりママ”のミーマとマーミーに愛情たっぷりに育てられる日々が描かれています。ミーマとマーミーは、正反対の性格ながら息ぴったり。楽しいことを次々に思いつき、一家は笑い声にあふれています。近所には、一家に対して冷ややかな視線を向ける人もいますが、“ふたりママ”と3人のきょうだいは、軽やかに、しなやかに、そして力強く生きていきます。「ちがいは恵み」というあたたかな思いが伝わる絵本です。

小説

『女子的生活』 坂木 司

足には自信があるからフレアタイプのショーパン、トップスはエアリーな素材のブラウス、カーキの中袖ジャケットで引き締めて……と、“女子的生活”を満喫するのは、東京のアパレルメーカーで働く小川みき。しかし、彼女のアパートに突然現れた、高校の同級生・後藤は「……小川、幹生?」と問いかけます。
そう、みきは女性として生きる男性、トランスジェンダー。偏見や生きにくさに堂々と立ち向かう、みきの生き方を応援したくなる小説です。

「自分らしさ」を生きる。

読み物

『女の子はどう生きるか 教えて、上野先生! 上野 千鶴子

「名簿はどうしていつも男子が先なのですか?」、「彼氏がいることだけがリア充なのでしょうか?」、「セレブな専業主婦になりたいけど、だめですか?」……10代のリアルなモヤモヤ、悩み、疑問に、上野千鶴子先生が全力で回答!社会に潜む差別や刷り込まれた価値観を洗い出し、一人一人が自分らしい選択をする力を学べる一冊。もちろん、「女の子」だけでなく「すべての方」にオススメです。
巻末には、大きな話題を呼んだ「2019年度東京大学入学式式辞」も収録されています。こちらも是非。

読み物

『自由への手紙 オードリー・タン』 オードリー・タン/語り クーリエ・ジャポン編集チーム/編

オードリー・タン(唐鳳)は、2016年に台湾で最年少、かつトランスジェンダーで世界初の閣僚に就任しました。大臣に就任する際、性別欄には「無」と書いたことで知られています。この本の中で、自身について「マイノリティ」というカテゴリーには当てはまらない、「インクルージョン(包括的)」な存在であるとし、以下のように語っています。

どちらでもあるし、どちらの側にでもなれる。
どちらも含むのではなく、すべてを含む。
どちらも尊重するのではなく、すべてが尊重される。
生物学的な分類に縛られることなく、自らの能力を発揮できる社会を実現するヒントが詰まった1冊です。

絵本

『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』 キース・ネグレー

今から180年ほど前のアメリカでは、女の子が着ることができるのは窮屈なドレスだけでした。そんな時代に、はじめてズボンをはいた女性のひとりが、この絵本の主人公メアリーです。
ズボンをはいて街に出たメアリーは「男の子の服を着ているなんておかしい!」と激しく非難されますが、「わたしは“わたしのふく”を着ているのよ」と言い返し、堂々と学校に入ります。「自分らしさ」について、考えるきっかけとなる絵本です。

小説

『たてがみを捨てたライオンたち』 白岩 玄

仕事で評価されず、妻から専業主夫になることを提案されて戸惑う直樹。地位やお金は得たけれど孤独を抱えるバツイチの慎一。モテないことに劣等感を抱えるアイドルオタクの幸太郎──。「仕事ができて、モテてこそ男だ」という価値観にとらわれた3人は、弱音を吐けない日々に“もやもや”を抱えています。やがて、自分に生えている「たてがみ」の存在に気づいた3人は、苦しいのは自分だけではないと知ることに……。

となりの難民・移民。

レシピ本

『海を渡った故郷の味』 難民支援協会

日本に暮らす難民の方から教わった、世界15か国・45の家庭料理を集めたレシピ本です。現在、日本には多くの難民の方が暮らしていますが、遠い存在のように感じている方も多いかもしれません。しかし、彼ら、彼女らも私たちと同じように故郷の料理を作り、ともに料理を囲んだ大切な人のことを思い出し、そして現在は私たちと同じ日本で暮らしています。
海を渡ってきた難民の方たちの故郷の味、そしてその思いに触れてみませんか?

『海を渡った故郷の味』表紙
エッセイ

『ふるさとって呼んでもいいですか 6歳で「移民」になった私の物語 ナディ

1991年、6歳の時に家族5人で「出稼ぎ」のためにイランから日本にやって来たナディ。興味本位の視線や偏見、在留資格を持っていないため(後に「在留特別許可」を取得します)健康保険に入れない……など、「壁という壁には当たりつくした!」と自ら語る28年間の日々が綴られます。
様々な背景を持つ人や子どもにも読んでほしいという願いから、この本ではすべての漢字に「ふりがな」がふられています。多くの方に手に取って頂きたい作品です。

小説

『やさしい猫』 中島 京子

保育士のミユキさんは、小学生の娘・マヤちゃんと暮らすシングルマザー。東日本大震災のボランティア活動でスリランカ人のクマさんと出会い、再婚。3人は家族として暮らし始めます。しかし、クマさんが不法残留で、東京入国管理局に収容されてしまいます……3人はふたたび一緒に暮らすことができるのでしょうか?
「入管行政」を題材に、誰にとってもかけがえのない「人の命の大切さ」をあたたかく描く小説。今年ドラマ化され、話題となりました。

ノンフィクション

『ボーダー 移民と難民 佐々 涼子

著者は、かつて司法試験予備校でともに学び、現在は難民問題のエキスパートとして活動する弁護士・児玉晃一と偶然再会。児玉の案内で牛久の入国管理センターを訪れますが、長期収容されている外国人と面会し、その窮状にショックを受けます。命からがら日本にたどり着いた難民たちを、私たちはどう受け入れてきたのでしょうか?制度としての「ボーダー(境界)」に迫りつつ、私たちの心の中にある「ボーダー」にも迫るノンフィクション。

世界→日本、日本→世界。

絵本

『みんなとちがうきみだけど』 ジャクリーン・ウッドソン/作 ラファエル・ロペス/絵

学校の教室に入ると、みんなが「きみ」とはちがっていました。肌の色、髪の毛、お弁当の中身、夏休みの過ごし方……。「きみ」は、まるで世界の外側に立ったままでいるように思うかもしれません。誰も知っている人がいない場所で、一歩を踏み出すことは簡単ではありません。しかし、この絵本に登場する「きみ」は、「じぶんのはなし」をすることで、世界が少しひろくなり、「いばしょ」を見つけることができました。「ちがうこと」は「すばらしいこと」というメッセージが詰まった絵本です。

エッセイ

『世界の台所探検 料理から暮らしと社会がみえる 岡根谷 実里

著者は、世界中の家庭の台所を訪ねて、“いつもの料理”を一緒に作り、味わい、そこから見える暮らしについて考察を重ねてきました。世界には、土地の暮らしを映した多様な料理があり、訪れるたびに新しい発見に感動する一方、おいしい食事のまわりには笑顔が生まれ、にぎやかな笑い声が聞こえてくることは、世界中どこであっても変わらない、と著者は語ります。観光ガイドブックとは違う、その国に住む“普通の人たち”の暮らしを、台所から覗いてみませんか?

小説

『Masato』 岩城 けい

12歳の真人は父親の転勤に伴い、家族全員でオーストラリアに移住。現地の公立小学校の5年生に編入しますが、英語が理解できないため、ケンカをして校長室に呼ばれても、事情が説明できず悔しい日々を送っていました。しかし、人気者のジェイクにサッカークラブに誘われたことをきっかけに、自分の居場所を見つけた真人は、急速に現地の生活に馴染んでいきます。一方、真人の母親・遼子は現地の生活に馴染めないまま……。真人と、孤立を深める母親の間には、やがて大きな隔たりが生まれていきます。

読み物

『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った』 金井 真紀

「猫でテーブルを拭く?」と思う方もいるかもしれませんが、これは「やり方はいくらでもある」つまり「意外なところに道はある、解決策はひとつではない」を意味するフィンランドのことわざです。この本は、世界各地36言語のことわざと文字を集めて、イラストとエッセイで紹介。外国語は苦手だし、海外に行くのも面倒だなぁ……という方にも、身近なことわざを通じて、世界は多様性に溢れていることを感じて頂ける一冊。

ページの最初に戻る