2017年12月17日の図書館だより

2017年12月17日(日)

さて、今回こそ名古屋市博物館で開催されている「北斎だるせん!展」を観に行った話を書きます。葛飾北斎は2度名古屋に滞在したといわれており、名古屋に縁のある絵師として知られています。

かの『北斎漫画』は名古屋の版元から出版されており、『北斎漫画』の宣伝もかねて1817(文化14)年に行われたのが、今回の展示で大きく取り上げられている、西別院(本願寺名古屋別院)で大だるまを描くパフォーマンス。絵のサイズは縦18m、横11mという巨大なもの。このパフォーマンスは当時の大きな話題となり、人々は北斎を「だるせん(だるま先生の略、キムタクみたいな省略ですね)」とあだ名をつけて呼んだそうです。

今回の「北斎だるせん!展」では、このだるま絵パフォーマンスについては勿論のこと、「富嶽三十六景」シリーズ中に描かれた名古屋の図「尾州富士見原」について、名古屋から富士山は見えたのか?・・・という謎を詳しく検証していて、とても面白かったです。結論から言ってしまうと、北斎が描いた富士見原(現在の名古屋市中区富士見町)からの富士山は、現在では南アルプスの聖岳ではないかといわれています。しかし、遥か遠くに見えた小さな山の頂を「憧れの富士山が見えた!」と思い、このような名画が生まれたのかと思うと、その想像力、というよりも創造力に脱帽しました。

「北斎だるせん!展」にちなんで、11月23日に西別院で行われた大だるま復元イベント“北斎×西本願寺「北斎の大だるまがよみがえる」”は、当日出勤していたので残念ながら観に行くことが出来ませんでした。しかし、展示を見ていると西別院で絵を乾かす作業を無料で期間限定公開していると紹介されていたので、思い立ったら吉日!・・・というわけで、この日はドニチエコキップで移動していて、幸い時間もあったので、西別院まで足を延ばすことにしました。

西別院へ出掛けたのは初めてだったのですが、近くには仏壇・仏具のお店が多くて驚きました。かの歴史的なイベントが行われたお寺・・・と思い、お寺を見ると意外にも近代的な建物。そうですよね、空襲で建物の多くが焼失していますから当然のことです(北斎が描いた本物のだるま絵も焼失しています。残念!)。建物の前では、お坊さんが「どうぞお入りください。写真もご自由にお撮り下さい~。」と満面の笑顔で案内をして下さり、こちらもちょっとビックリ。本堂に入ると、さほど人混みにはなっておらず、再現された「だるま絵」をじっくりと落ち着いて観ることができました。

 実物の「だるま絵」は想像していた以上に大きくて迫力があり、とても立派なものでした。一年が終わろうとするこの季節に「縁起の良いものを見させて貰ったなぁ」と感激しました。そして、何よりも心に残ったのは「だるま絵」を見つめる人達の幸せそうな顔。これこそ、実際に足を運ばなくては見ることができないものだと思いました。ここ数年、個人的にテーマとしているのが「実際に足を運ぶ」こと。本や雑誌やテレビ、ネットで「見たような気になる」ことを、意識して避けるようにしています。今回のように、心が動く、感動する、という経験ができると、本当に足を運んで良かったなぁ、としみじみ思います。

さて、この日はもう一箇所、ドニチエコキップを使って足を延ばした場所があるのですが、この話は次週に。

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